最近、なんとなく不思議な話が読みたくなり、ふと検索を掛けてみると、2004年頃の「本当にあぶない所をみつけてしまった」(通称蓋スレ)というスレッドを見つけました。
というわけで、色々なことを放り投げ、一週間ほどかけて、かなりのボリュームでしたが、ようやく読み終わりました。さて、今回はその感想などを書いておこうと思います。初っ端からネタばれので、どういう話か気になる、という方はこの先を読まず、下記のリンクからじっくりお読みください。ただ、めっちゃ長いです、小説一冊分は軽くありそうです。
参考リンク(サンブログ 様)
【倉敷蓋事件まとめ】本当に危ないところを見つけてしまった【蓋スレ】
俗にいう蓋スレの誕生
基本的に以下は全てネタバレになります。
もう一度、以下、何一つ隠すことなくネタバレになります。何一つとして、誰にも配慮しないネタバレが含まれます。
さて、俄かにオカルト板に立ち上がった蓋スレ。蓋と呼ばれる、まあ物体である「蓋」を探すスレなのですが、紆余曲折をたどりつつ、非常に読み応えのあるものとなっています。
年代としては電車男と同じですね。あんな感じで、掲示板の中の人たちとなれ合いつつも、それぞれが疑心暗鬼になったり、いろんな人が考察したりで話は進んでいきます。そして釣り人が何人も出てきて、騙されても楽しむ人、絶対に騙されないぞという人など、様々なスタンスの人々を巻き込みながらスレは進みます。
蓋を探すだけなのに、何が人を夢中にさせるかというと、やはりリアル感のある突撃と疑心暗鬼、そして探求心に満ちた人々の姿なのだろうと思います。
黒幕はいるけれども
取り合えず、黒幕というか釣り主はスレを立ち上げた人なのですが、その方が全てを打ち明けた時、スレ内はなんとも言えない奇妙な空気に満ちていました。
いざ釣り宣言がされた時、確かにその衝撃はあったのだと思います。ですがその時、既に蓋スレは住民たちが独自に作り上げた、一種の秩序や目的の上に成り立っており、よく分からないエネルギーに満ちていました。結果として、ネタバレした所でスレの勢いは止まらず、黒幕の話よりもコテハンの話を求める様子さえありました。
魅力的なコテハンが跋扈し、しかしそのコテハンも本当の人物かネタかも分からない。そんな真実かも分からないコテハン達が物事を検証し、そして時にはコテハンA=コテハンBではないかと推測されたり、住民も一緒に推理をする。とにかく事実が何も見えないものですから、言葉の端を捉えながら、それぞれが真実を推測することになります。
既にスレは黒幕のものではなく、偶然の産物たる各コテハン達のものとも言えたでしょう。それは釣り宣言がなされてからも、スレが二年近くもダラダラと続いていたことからも頷けます。そして、その結果、黒幕が想定していたものとは異なるゴールにたどり着くことになります。まあ、別の「蓋」の発見という、事実を書けばそれだけのことなのですが……。
さて、ある意味で、蚊帳の外に追い出されてしまったかのように見える黒幕ですが、非常に素晴らしい人物を生み出しました。それが「黒帯」なるコテハンです。スレ主はスレを立てた人物や各コテハン、あとは名無しなどを並行して演じていましたが、黒帯もその一人。
この黒帯、なんと最序盤で姿を消してしまうのですが、その消え方が非常にスピーディで伝説的。奇妙なカリスマ性さえ感じてしまいます。ただ、思えばそれも、黒幕にとっても予想しえなかった「区らしき」なる人物(黒幕とは無関係のスレ住民)との相乗効果によるものでもあり、そのようなよく分からない効果が相次ぎ、謎が謎を呼ぶ不思議な展開が繰り広げられていきます。一つの話題が去った頃に間髪入れず次の話題が出て、寝られない人が続出したとか。
ただ、私は先のリンクとは別のサイトで読んでいたのですが、この真の黒幕である「飛脚」氏の書き込みが、意図的なものか編集上なのか、かなり削除されているような状態のものを読み進めました。
ですので、結論として「飛脚が黒幕である」という文言を見た時も、誰だそれって思ったのが事実です。点呼なる行為もほぼ省かれていましたからね。ですので、私は、リアルタイム、もしくは違う編集のされ方(存在するのか分かりませんが)で見て、飛脚氏を身近に感じていた方とは違う感じ方で読み進めていた節があるかも知れません。
実況による探求心の刺激
2004年、携帯は普及しつつも、まだネット環境が弱い時代でした。今では当たり前の動画撮影機能もメジャーでなく、画像が精一杯です。それも充電やらを考えるとあまり長時間の活動はできない、という背景がありました。また、ネット上に気軽にアップすることもできませんので、画像を一旦別の人に送ってからその人にアップしてもらう、などと手間が掛かることもあり、リアルタイムで情報が欲しいのに一手遅れてしまう、というやきもき感がありました。
あとは何と行っても待ち合わせの難しさ。ネタとリアル、そして猜疑心が交わり、連絡手段も限られると待ち合わせも一大イベントとなりますし、その実況を見るのも新鮮な気持ちです。
また、突撃者と実際に電話で連絡をして、その内容をスレに書き込む「中継」氏一同の存在も当時ならではと言ってもいいかも知れません。
スレの住民にとって、そのような中での判断基準の第一はテキストであり、その真偽は投稿された時間、トリップ、ID、文脈などから考えるのですが、どれだけ考えても真に正しいものを探すことが難しかったのです。途中からトリの割れたコテハンも出現し始め、果たしてそのトリさえも本人か分からないという疑心暗鬼に陥ることもしばしば。
そして、結論から言えば住民が探していた蓋は、倉敷ではなく福山に存在していたのですが、それが分かったのはずっと先のことです。当初はそのようなことは分からず、倉敷のどこかに蓋があるはずだ、という考えに立脚して物事が進みます。つまり、ないものをあるものとして考察し、嘘か本当かわからないコテハン達が勇者として現地に馳せ参じ、これも嘘か本当か分からない実況の様子を入れつつ真実へ近づいていくのです。
住民たちもどこかに真実があると思い、煽りも入り、虚構も入りながらも、それでも少しずつ先へ進んでいく様は、それこそ真実へ向かう確固たる住民たちの意志を感じ、感動すら覚えます。
もちろんオカルト的要素も
私はそこそこオカルトが好きです。そしてオカルト板らしく、出てくる画像のどこどこに霊がいるとか、お祓いはしとけよとか、そういう流れも出てきます。
極めつけはやはり車内の心霊写真の騒動ですね。これは見事でした。ほかの画像の多くにも心霊要素があるという話が出たり、突撃がほとんど深夜だったり、スレ内にはどことなくおどろおどろした雰囲気が漂うこともあります。
参考リンク(墓場ネット)
恐怖! 実録! 本当にあった怖い(?)話 by 墓場ネット(前編)
最後の蓋、二年後の真実
スレが始まって、黒幕のネタ晴らしまでが約一週間か二週間ほどでしたでしょうか。それからもだらだらとスレは進み、一年後には黒帯の一周忌も行われ、そして同時並行で「区らしきの蓋」の捜索が別地域で行われます。
登場人物も倉敷捜索隊とは別の方々が数人現れ、そして遂に念願の「蓋」が発見されます。
ただし、これが思ったよりも何とも普通の蓋であり、道中に普通にあるようなものでした。もちろん中に黒帯はいませんし、顔が二つある生物もいません。それどころか日の元で見ると何の変哲もない、確かポンプ場の蓋? というものでした。
「区らしき」氏はまだスレに在住しており、以前、どうやらこの蓋へ実際に数人を案内していたとのことでした。ただ、蓋の真実をスレに書き込んだものは誰一人として居なかったとのこと。
そして真実はわかりませんが、おそらく566氏や17才氏など、初期捜査に関わりながら、遂に蓋の発見に至らなかったとされる人物たちも、この存在に気が付いていたのではないかと思われます。
その彼らの想いはただ一つ、この蓋スレを存続させたい、という想いだったのではないでしょうか。蓋は見つからないままに、蓋を追い求めるロマンという楽しみを止めたくなかったのではないでしょうか。
しかし、やはり最後は見つかってよかったと思いますし、期間としてもその辺りが落としどころでしょう。終わり方として頗る良好の終わり方ではないでしょうか。
倉敷の蓋スレに今更ながら興奮した話~まとめ~
画像転載元(pixabay)
電車男は社会的な流行となりましたが、それと同じく蓋も名作です。ですが、もうあの頃の、なんというか、アンダーグラウンドとしてのインターネットと、リアルとが絶妙なバランスで絡み合わせるようなことはできないだろうと思います。
時代というものもありますし、蓋は2000年代前半という背景があったからこその名作でした。今はYou Tubeなどでより臨場感を得つつ、大勢で楽しむこともできるかも知れませんが、きっとそういうものではない楽しさが「蓋」スレには秘められています。
そして技術は後進することはないでしょうから、その絶妙のバランスはもう二度と戻ることはなく、今となっては、スレを見て思いを馳せることで、在りし日のロマンを感じることしか出来ません。ですが、それはきっと我々を新たなロマンへと誘うことでしょう。あると思います!
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。当記事が何らかの参考になりましたら幸いです。