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硫黄島プロジェクト_手紙と星条旗の感想

今更ではありますが、硫黄島からの手紙と父親たちの星条旗を視聴しました。「硫黄島プロジェクト」として、硫黄島の激戦を日米両方の視点から描かれた作品になりますね。「硫黄島からの手紙」は日本側、「父親たちの星条旗」はアメリカ側の視点での物語です。映像の一部は使いまわしとなっているようですが、個人的には特に気にならない範囲でした。

 

今回は二作を見終わった後の私なりの感想を、正直に記載していきます。

 

※なお、ネタバレを含みます。

 

日米作品、両作の比較

どちらも同じテーマを扱ったもので、一方のシーンの裏側として、もう一方のシーンが出てくるなど、密接と言えないまでもそれぞれリンクしている箇所もあります。とはいえ、基本的にはそれぞれの作品で完結しているものであり、両方とも見ないと話が分からない、ということはありません。

 

硫黄島からの手紙

まずは硫黄島からの手紙から先に見ました。

 

ストーリーは二宮和也演じる西郷の視点で進んでいきますが、敗色濃厚な中の戦いが続きます。それでも終始暗いムードではなく、そんな中で懸命に状況を打破しようという奮闘が伺えます。また、単純な戦闘・戦略の物語ではなく、各登場人物の背景、過去にも光が当てられたドラマもあります。父親たちの星条旗と違い、どれも直前・直後でスポットライトが当たる人物たちの回想ですので、比較的、物語の現在軸を逸れずに視聴できます。

 

情報によると、二宮和也のオーディションにあたり、それを受けて西郷という新しい人物が追加されて話が作り直されたようです。二宮さんの演技や作品上の役割に関して色々とネット上では物議がありますが、私としてはキャスティングを含め、非常に見事と言いたいです。

 

テーマがテーマですので、ともすれば過去の事実を新たに映像にしたもの、となりかねませんが、二宮さん=西郷を新たに追加することで、一般的な人物像としての戦争体験を追うことが出来ます。視聴者の多くは戦争を実際に経験したことがないでしょう。そういう視聴者像と西郷はどこかしら重なる所があったのではないでしょうか。また、当時の日本人が実際にどういう心境で戦地に臨んでいたかは分かりませんが、皆が一様に徴兵を望んでいたはずはないと思います。そこに新たに米国主導で光を当てたこと、ここにも深い意義があるように思われます。

 

父親たちの星条旗

「硫黄島からの手紙」の戦争映画とは異なり、こちらはどちらかと言えば史実を追ったドキュメンタリーを視聴しているようです。戦争シーンももちろんありますが、メインは硫黄島に掲げられた星条旗にまつわる話です。一枚の写真により多くの人の人生が変わること、そして多くの戦争もので語られない、お金の話など、戦争ものとして珍しい視点で描かれているのではないでしょうか。

 

ストーリー軸は大きく見て三本あります。硫黄島での戦争、そして戦争と並行して米国内で繰り広げられる国債行脚、そして戦後の話です。

 

正直な感想になります。恐らく、アメリカ側の戦争事情を知らない人間からすれば、一度の視聴では、ちょっと全体像を把握しきれないかと思います。ストーリーは壮大かも知れませんが、話が飛び飛びにならざるを得ず、目の前の物語に集中して来たところで別の話に飛んでしまう、というようなことも数度ありました。

 

しかし、戦争を史実を受けて描いたもの・そこに描かれるリアルと勝利にまつわる事実とあれば、単純な話にまとめられるはずがありません。また、日本側の事情を見せず、敵国として淡々と描くことで、「日米の戦争」ではなく、「アメリカの戦争」ということを見せつけられます。そこにはアメリカ美化でも賛辞でもない生の声があります。何より面白いものを撮ろうとしたのではなく、史実を描いたもの、という潔ささえ見え隠れします。

 

私はあまり戦時中の実際を知りません。星条旗が入れ替わっていたことも、こういう風に英雄として扱われた人間の実際(政治的な話)を見たこともありませんでした。その面でみれば、間違いなく後世に残す価値のある作品でしょう。

 

 

両作を合わせての感想

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画像転載元(pixabay

「父親たちの星条旗」には原作がありますが、「硫黄島からの手紙」はそれらしいものがないようです。

 

この点で言えば、父親からの星条旗は膨大な物語をその尺に入れなければならないという意味で,一種の縛りが出てしまっていたのかも知れません。それで、本来なら文章で追えるものを映像で流すことになるのですが、そこがやはりちょっと唐突な流れになってしまうように見えます。

 

両作とも芸術と呼ぶに値するものですが、テイストは変わって見えます。また、すっきりするというか、そういうものはあまりないように思えます。勝利の喜びもなく、敗北の悲しみも描かれることもなく。結局、戦争とは何だったのかと、視聴後はそれぞれが思いを巡らせるのではないでしょうか。

 

どちらから視聴するかというのも難しいですね。ただ一つだけ、なるべく迫力のある状況を作って視聴してみたかったとは思います。スクリーンで見るのと、部屋で見るものとは全く違ったものになるかも知れません。映像はCGを交えたもので、やはり戦闘シーンは圧巻です。

 

 

硫黄島プロジェクト_手紙と星条旗の感想~まとめ~

日本人であるからには、どうしても日本側で見てしまいますが、二作を視聴することで敵味方という概念を超えて、戦争というものが何だったかと考える契機となります。グロテスクな描写もありますが、それは必要とされるものでしょう。綺麗な戦争はないということも一つ、そして何よりリアルなものを誇張なしに描いていきたい、という意気込みのようなものを感じます。

 

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。当記事が何らかの参考になりましたら幸いです。

 

参考リンク
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